国民生活センターには、占い鑑定サイトに関するトラブルの事例が複数報告されています。例えば、無料で占うというメールが来たので、気軽に登録し、占ってもらった60代の女性がいました。途中からは有料のポイントを購入する必要があったものの、占い師から「絶対幸せにしてあげたい」と言われ課金しました。その後も、あと少しと引き延ばされ、借金をして250万円を支払ってしまいました。ここまで入れ込んでしまったのは、最初のやりとりの時期に偶然、持病が改善したので、占いのおかげと思い込んだことが理由のようです。
別のパターンでは、やはり無料占いサービスサイトを見つけた30代の女性が1回1500円で鑑定を依頼しました。占い師から1日に何通もメールが届くようになりましたが、彼女は当時、病院で入院しており、断ると症状が悪化するのではと思って利用を続けてしまいました。1通のやりとりで1500円がかかるので、総額100万円以上も支払ったそうです。その後、ネットで調べたところ、自分がやりとりしていた鑑定結果と全く同じものを見つけ、自分だけを占っていないことに気が付きました。
平成28年の事例では、544万円をクレジットカードと振り込みで支払った人が、国民生活センターに相談し、返金を申し入れました。最終的に70%の返金で和解となりましたが、3割は返ってきませんでした。
この手のトラブルはあとを絶たないのですが、実はネット詐欺とは言い切れない部分があります。ユーザーは、複数の占い師から特定の人を自分で選んで占いを依頼しており、無料から有料ポイントを購入する場合も規約に同意しています。占いなので、確実な未来を予言するわけではないのは理解しているはずだ、というのが理由です。出会い系サイトで嘘をつきまくっているなら法的に対処することもできるのですが、占いだと対応が難しくなるポイントです。
無料の○○占いとか□□鑑定といったサイトに登録し、その結果をSNSに投稿するような人は要注意です。まず、初期段階ではターゲット層のメールアドレスを収集することが目的です。次に、ダイレクトメールを送りまくって、占いサイトや出会い系サイトに誘導し、課金するまで追いかけるのです。登録すると、1日に数十通から数百通も送られてくるケースがあるようです。無料だから、と飛びつく前に、なぜ手間もコストもかかることが無料なのだろう?と考えるとよいでしょう。
大雑把に言うと、一般的な買い物と同じですので、課金するかどうかは自分でコントロールするのが基本です。ただ、「体を壊す」「金運が開ける」「お告げがあった」とあの手この手で、引き延ばしに来ます。自分の環境に課題を抱えているとすがってしまう心理を突いてきているのです。そこで、重要なのが相談できる家族や友人です。第三者であれば、冷静な判断をしてくれるはずです。
通常のネット詐欺とは異なり、占いトラブルの場合は、国民生活センターや弁護士などの手を借りることによって、支払ったお金の一部を取り戻せる可能性があります。大金を支払ったあとに、だまされたと感じたなら相談してみるとよいでしょう。
あらかじめの対策としては、この手の事例があるということを知っておくことが有効です。無料で集客したり、メールアドレスを集めたり、絨毯爆撃のようにダイレクトメールを送ったり、占いそのものというよりはシステムの利用料として課金するように誘導したり、止めようとしたら引き留めるため説得されるようなことを知っていれば、どこかで気が付きます。早い段階で気が付けば、被害も抑えられます。
ぜひ、ご両親にこの事例を紹介してください。「そんなのに引っかかるわけないだろう」と笑い話にすることが、あとの被害を抑制してくれるのです。
あなたの両親も“ネット詐欺”の餌食になっているかもしれません――その最新の手口を広く知ってもらうことで高齢者のデジタルリテラシー向上を図り、ネット詐欺被害の撲滅を目指しましょう。この連載では、「DLIS(デジタルリテラシー向上機構)」に寄せられた情報をもとに、ネット詐欺の被害事例を紹介。対処方法なども解説していきます。
NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構)
高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
INTERNET Watch,DLIS・柳谷 智宣
≪引用元:Yahoo!ニュース≫
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190621-00000014-impress-sci